9月29日JFCA平成29年度第2回イブニングセミナーがJFCA会議室で実施されました。
トレンドの話題について理解や議論を深めていただくために、JFCAではイブニングセミナーを開催しています。今回は、長岡技術科学大学 大学院工学研究科 教授 中山先生から「無機材料の配向制御手法の開発と粒子モーションコントロールへの展開」について、ご講演いただきました。
セラミックスには各種の優れた特性があり、セラミックスを扱う方々には、その特性をどのようにして効率よく導き出せるか、という課題が常に付きまといます。原料・組成・プロセス・装置などの改良により各製品の性能を発展させてきましたが、製品の特性を有する粒子を揃えることにより、その特性を向上させる試みは誰もが考えたことだと思います。この配向制御は、近年大きな成果が得られ、研究には目を見張るものがあります。特にセラミックス材料の性能向上には欠かせない技術であるといえます。
その中でも無機材料の特性向上手法の一つとして配向制御・微細構造制御は、最も重要といえます。特に、熱伝導度や光学特性分野などでは配向制御の重要性が検討され、電場配向に着目した研究が行われています。電場配向では絶縁破壊電圧という理論上の問題点が指摘されていたのに対し、中山先生はナノ秒パルス電場を用いることで実質的に克服できることを明らかにして、絶縁破壊電圧の10倍以上もの高電圧を印加して材料制御が可能なことを見出しました。これにより従来の電場配向で不可能であった多様な微細構造制御が可能なことを明らかにしました。近年では当該技術とナノレベル三次元プリンタ技術を組み合わせて、さらに高度な微細構造制御とその動作制御(モーションコントロール)が可能になっています。
ご講演では、最初に、パルス場の活用として、3Dナノプリンター装置、2光子励起プロセス特徴やハイブリッド三次元構造体例などについてのご紹介がありました。実際の配向は、磁場配向との比較が行われ、絶縁破壊電圧の壁があるが、電場の方が理にかなっているとのご説明がありました。さらには、直視的にわかるように、ナノ秒の電場で物質が動く様子を、正極近辺の電気泳動により示されました。さらには、電場によるモーションコントロール例として、ジルコニアビーズミルのビーズひとつを使用して、配置する位置によりビーズが動く場合と動かない場合を動画にて示しました。また、その応用例として、平面伸張流動を用いた粒子計測をご提案されました。これはセラミックス粒の全てを計測できるため、異常粒を検知した場合のみ除外することが可能であるため、高強度のセラミックスを得ることが可能です。また、将来においては、MEMS等の動作制御へと応用展開が可能であるとのお話がありました。
フリーディスカッションに移ると、中山先生の明るいキャラクターによる和やかな雰囲気の中で議論が始まりました。多面的な質問が寄せられましたが、興味の中心は、配向制御手法と粒子モーションコントロールをどのようにして活用していくかという点でした。受講者からも色々なアイディアが出され、本分野がこれからも発展していくことを示唆させるディスカッションとなりました。
最後になりますが、中山先生とご参加いただいた皆様方に感謝を申し上げます。