3月9日JFCA平成29年度第4回イブニングセミナーがJFCA会議室で実施されました。
トレンドの話題について理解や議論を深めていただくために、JFCAではイブニングセミナーを開催しています。今回は、東京理科大学 理学部第一部 応用物理学科 教授 宮川先生から「InGaZnO4バルク単結晶の育成技術の開発」について、ご講演いただきました。
イグゾー。どことなくユーモラスな響きを持ってネーミングされたこの材料は、材料に関係する技術者でなくても、一度は耳にしたことがあると思います。このディスプレイに採用された優れた材料特性に関しては、引き続き多くの研究が行われており、未来においても革新的なテクノロジーを産み出すものであると期待されています。その未来に向けたアプローチは、材料に携わる者としては目が離せない内容であると言えます。
InGa3(ZnO)n(通称:IGZO)は、高い電気伝導性、高い移動度、さらに可視光に対する高い透明性を現す非常に高いポテンシャルを有した材料であることが知られています。そのため薄膜を中心に精力的な研究がなされ、アモルファスIGZOやc軸配向結晶膜では、高精細フラットパネルやフレキシブル基板のTFT活性層に使われており、注目を集めています。その一方で、大型のバルク単結晶は育成が困難であり、いまだに実現されておらず、大きな課題・問題点の一つとなっています。この課題となっているバルク単結晶育成に取り組み、はじめてcmサイズのIGZO単結晶育成に成功した内容についてご紹介いただきました。
ご講演では、IGZOの研究の歴史及び結晶構造・電気特性などに触れられたあと、バルク単結晶IGZOの研究状況についてご説明がありました。異物との接触を必要としないため高品質単結晶を育成可能なFZ法(フローティングゾーン方)での取り組みから、ZnO蒸発に対する処置として、ZnO量の増加及び加圧雰囲気により、大型のIGZO単結晶を育成したプロセスについて解説されました。また、アニール前には青かった結晶が、酸素雰囲気アニール効果により無色透明になった結晶が示され、さらに本アニールの結果として伝導度の低下したことが示されました。これは酸素欠損が電気伝導に大きく影響しているとのご説明がありました。
フリーディスカッションに移ると、ご出席いただいた方々からは、プロセスや物性の詳細についての質問が寄せられました。宮川先生からは、丁寧にお答えいただくともに、まだまだ研究すべき内容、解明すべき事象が多い領域であることをご説明いただきました。
最後になりますが、宮川先生とご参加いただいた皆様方に感謝を申し上げます。