9月20日JFCA平成30年度第2回イブニングセミナーがJFCA会議室で実施されました。
トレンドの話題について理解や議論を深めていただくために、JFCAではイブニングセミナーを開催しています。今回は、香川大学 工学部 材料創造工学科 教授 楠瀬先生から「微量添加による構造用セラミックスの電気抵抗制御」について、ご講演いただきました。
今年度第1回イブニングセミナーではファインセラミックスの耐熱衝撃性を取り上げました。熱に強く固いファインセラミックスの他の特徴として挙げられるのが、電気的に絶縁である材料が多いことです。特性を引き出すために、製造しやすくするために、ファインセラミックスでは材料に添加物を加えますが、電気抵抗に影響を与える可能性があります。絶縁性を損なうことなく応用するためには、様々な手法による電気抵抗を制御することが求められます。
構造用セラミックスとして広く使われているAlN、Al2O3、ZrO2などは1012~1015Ωcm以上の絶縁体です。近年、これらの絶縁体セラミックスの電気抵抗率を制御して電子部品の製造装置用材料として応用する開発が進んでいます。絶縁体セラミックスの電気抵抗を制御するためには、従来の粒子分散複合材料では20~30vol%以上の導電性第二相粒子が必要でしたが、三次元的に焼結体中を伝搬している粒界を導電経路として用いることにより、3vol%以下の導電性粒界相によって電気抵抗率の制御が可能です。本セミナーでは、特に導電性粒界相および粒界偏析を用いた電気抵抗率制御について解説いただきました。
ご講演では、研究室で取り組んでいるテーマについて触れられたあと、粒界相制御による絶縁体セラミックスの導電化について、AlNを素材として、必要性・目的・作製方法・実験結果・組織観察などについてご説明がありました。得られた組成では電気伝導度が制御でき、さらには放電加工が可能であると解説されました。窒化物だけでなく、酸化物セラミックとしてポピュラーなAl2O3についても同様のアプローチが可能であり、実験結果について説明が行われました。続けて粒界相制御による導電性セラミックスの高抵抗化についてお話があり、SiCセラミックスの優れた特性を保持したまま高抵抗焼結体を得るアプローチが示されました。助剤量-焼結条件-電気抵抗の関係については、焼結温度により高抵抗-低抵抗-高抵抗-低抵抗と変化の挙動についてご説明がありました。粒界偏析など発展した内容についてもご講演が続き、参加者は最後まで熱心にメモをとっていました。
フリーディスカッションは、ここ数年で最も多く、講演に参加されたほとんどの方々にご出席いただきました。ボリュームある講演内容を受けて、アプリケーションへの展開やプロセスについてのアドバイスなど様々な事象に関する質問が寄せられました。ファインセラミックスの研究が出口製品やプロセスに向かっている中で、楠瀬先生が助剤を中心に機能開発を進めることについては、徐々にこの形態にセラミックス研究は戻ってきているとのご説明をいただきました。多種にわたって丁寧なご回答が続くなか、時間が短く感じられたフリーディスカッションが終了いたしました。ご参加いただいた方々には満足いくフリーディスカッションだったのではないでしょうか。
最後になりますが、楠瀬先生とご参加いただいた皆様方に感謝を申し上げます。