5月15日に2019年度JFCA第1回イブニングセミナーがくるまプラザ会議室で実施されました。
トレンドの話題について理解や議論を深めていただくために、JFCAではイブニングセミナーを開催しています。今回は、クアーズテック株式会社研究開発部のセラミックス材料担当 R&Dマネージャー藤田光広氏から「セラミックスの透明化と光学応用」について、ご講演いただきました。
冒頭藤田氏より、当初からの会員企業であった東芝セラミックスからコバレントマテリアルを経てクアーズテックへ至った会社の御紹介がありました。その後で、不透明が当然として扱われていたセラミックスの透光化がどのようにして成し遂げられ、どのような分野での応用が期待されているかを平易に解説していただきました。
透明化が試みられているセラミックスとしては、YAG, LuAG, ジルコニアといった等方性物質が知られておりますが、アルミナのような異方性物質でも微粒化することによって透明化することが期待されます。YAGの例では、原料粉のイットリアとアルミナを混合造粒して、スプレードライ後に成型・焼成を経て仕上加工するという通常の工程を経て作製されますが、透明化のための以下の条件が紹介されました。高純度原料・気孔抑制・異物の混入防止そして適切な焼結条件で、焼成中に気孔を排出して粒子を均質化させるというものです。
また透明焼結体から光学製品を作るための研磨の重要性についても解説していただきました。多結晶体の場合、化学研磨では結晶面方向によって研磨レートが異なるため段差を生じやすく、物理研磨では研磨傷が残るので、両者のバランスを考慮して表面研磨するとのことです。光学製品の場合、Ra<0.5nm、波長の1/10の平滑度が求められます。また散乱によりレーザーの光路が横から見えるものは、透明化が不十分と言えます。現在、多結晶YAGを用いて、単結晶YAGとほぼ同等のレーザー発振が得られております。
用途としては、耐蝕性窓、液晶カバー、光学レンズ、レーザー発振源、各種放射線のシンチレータなどが考えられますが、実際には低コストな同等品のない分野に限られます。
今回のイブニングセミナーは参加者が32名と非常に多くの方に参加していただき、透明セラミックスという分野への関心の高さを実感しました。引き続き行われたフリーディスカッションにおいても参加者の皆様や講師との間で活発な議論が行われ、大盛況でした。
最後になりますが、クアーズテックの藤田光広氏とご参加いただいた皆様方に感謝を申し上げます。