9月26日に2019年度JFCA第2回イブニングセミナーがくるまプラザ会議室で実施されました。
JFCAでは、トレンドの話題について理解や議論を深めて頂くために、イブニングセミナーを開催しています。今回は、セラミックス材料を用いた三次元造形をテーマとして、JFCC 材料技術研究所 先進構造材料グループ グループ長 木村禎一氏から「レーザーを用いたセラミックス焼結技術」、株式会社エスケーファイン 技術顧問 法貴哲夫氏から「セラミックス3次元造形法による高精細・高品質セラミックスの造形」について、ご講演頂きました。また講演終了後には、両講師に参加頂き参加者全体でフリーディスカッションを開催しました。
1.「レーザーを用いたセラミックス焼結技術」/JFCC 木村禎一氏
セラミックス造形は、樹脂や金属のように融かして固める(鋳込み)と特性が変わってしまう事かなどから難易度が高く、造形には材料技術の不可欠である。レーザーを用いたセラミックスの製造プロセスは、樹脂との混合で造形して電気炉で焼成する“間接造形”と、レーザーで造形・焼結する“直接造形”があり、前者が一般的に用いられている手法であるが、JFCCでは難易度が高い後者を検討しているとのことでした。
レーザーは、吸収係数が高いCO2レーザーではなく、侵入が深いNd:YAGレーザーを選択し、レーザーの吸収を上げるためにカーボンを検討したところ材料に混合するのではなく照射表面に塗布することで効果を確認できた。乾燥・脱脂プロセスは、全体加熱では収縮の制御が出来ないため、電気炉ではなくホットプレートを選択している(ホットプレートは機材との界面からガスが発生し脱脂が進むため制御し易い)。その他、レーザー照射による焼結のメカニズムの検討状況、高強度アルミナ多孔体の検討状況などの説明を頂きました。
セラミックスのレーザー焼結直接造形は、高強度レーザー照射により短時間焼結が可能になったところで、基礎的な学理構築はこれからである。現状適応できそうなモノとしては、小型部材(数㎜厚)、セラミックの肉盛り、コーティングなどであり、複数機関と産業応用など共同研究を行われているとのことで、着実に開発が進んできているように感じました。
2.「セラミックス3次元造形法による高精細・高品質セラミックスの造形」
/エスケーファイン 法貴哲夫氏
(株)エスケーファイン社は、2018年10月に(株)写真化学より分社設立され、その際に大阪大学ベンチャーキャピタル(株)より出資を受けている会社で、主な事業内容はセラミック3D造形装置の販売、受託造形とのこと。(株)写真化学の保有する撹拌脱泡装置による造形材料の調合や、3次元造形用データー処理、光学などの技術を応用しているとのことでした。
3D造形装置の方式は、溶融積層造形(FDM)、インクジェット、粉体造形、光造形などがあるが、高精細造形が特徴である光造形を採用している。また光硬化性樹脂にセラミック粉体を混錬し、造形プロセスに最適な粘度条件に調合している。外販している装置は高精細タイプや大サイズ造形タイプなど、最小ビーム径はφ10数μm、位置分解能1μm、最大描画エリアは光学系を改良され300mmを実現しているとのことでした。
造形サンプルは、アルミナやジルコニア材用を利用し、フィルタや格子構造体、セラミックブロックをセラミックスでのつなぎ織りしたもの、ジャイロスコープモデル等があり、微細、中空、可動部を有するなどの特徴があるモノを実際のサンプルを使って説明頂いた。現在、かなり多くの試作依頼があり、用途も自動車用、電子部品、環境、宝飾、医療など多岐にわたっているとのことでした。近々何らかの製品で実用化される可能性がありそうに感じました。
フリーディスカッション
講演会後のフリーディスカッションは参加者全員の自己紹介から始まり、その後、講師との個別の相談や参加者相互での情報交換などで話が盛り上がり予定を超過しての開催となりました。参加者が次のアクションに繋げられるディスカッションが出来たかと感じております。
最後になりますが、JFCCの木村先生、エスケーファインの法貴先生とご参加いただいた皆様方に感謝を申し上げます。