11月22日に2019年度JFCA第4回イブニングセミナーがくるまプラザ会議室で実施されました。
今回は、材料開発で動向が気になる“マテリアルズ・インフォマティクス”について、NEDOの「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト:以下超超PJ」のプロジェクトリーダーである産業技術総合研究所 理事 村山宣光 先生に「シミュレーションとAIを駆使した新素材の高速開発」についてご講演頂きました。また講演終了後のフリーディスカッションでは、参加者全体が村山先生を囲み、途切れることなく質問が続き、活発な意見交換の場となりました。
1.ご講演「シミュレーションとAIを駆使した新素材の高速開発」/産総研 村山宣光 先生
“超超PJ”は、2016年からの6年間(第1期3年が終了し、第2期1年目)、総事業費約120億円で、企業18社が産総研で集中研究を行い、更に10の大学等の機関に委託研究をおこなうなど、オールジャパン体制で行っている。主に有機材料を対象に、従来にない材料設計シミュレーションの開発やと人工知能(以下AI)を、革新的な試作プロセスと評価技術を開発することで、『競争力の高い日本の素材産業の優位性を確保する』ことをプロジェクトの狙いとしている。目標は試作回数・開発期間を従来の材料開発と比較して1/20の短縮を目指している。またコンセプトは、計算・プロセス・計測の連携で、特に計算は石狩市に設置されてスパコンを専用でつくばからアクセスできる体制とのことでした。
“超超PJ“の成果で開発加速が想定される製品群として、参画企業18社からヒヤリングした結果から、有機半導体材料、有機無機ハイブリットコンデンサ等の高機能誘電体材料、コンポジット材料など高性能高分子材料、高性能触媒等の機能性化成品、CNT・グラフェン等のナノカーボン材料の5つの製品群が想定されているとのこと。
第1期(前半期)の成果として、“計算・AI関連”、“プロセス”、“計測”の中で、“計算・AI関連“を中心に説明を頂きました。利用されているマルチスケールシミュレーションシステムは、目的に合わせて改良した数多くのシミュレータで構成されており、一般にも公開されているとのこと。また主な成果として、誘電・光学特性、有機半導体、ナノカーボンの接触抵抗有機半導体のI-V特性、濡れ性の予測(接触角)、樹脂/無機フィラー複合材料のフィラー解砕過程の可視化などを紹介頂きました。
参考:先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT) https://www.admat.or.jp/page1
2.講演会後のフリーディスカッション
フリーディスカッションは、終始村山先生を囲んだ質疑応答となりました。更に聞きたいことやもう少し深く聞きたいこと等、参加者から途切れることなく出てくる質問に対して、一つ一つに丁寧に判りやすく答えて頂きました。
最後に、先生は元々実験がご専門とのことで、シミュレーションには懐疑的であったこと。その先生から何度も“(シミュレーションとAIで)ここまで解けるのか!”との発言をお聞きし、材料分野での有効性が改めて実感できました。
最後になりますが、お忙しい中、産総研 村山宣光先生とご参加いただいた皆様方に感謝を申し上げます。