11月29日にJFCAの2019年度第3回見学会が、KOA株式会社 七久里の杜工場(長野県下伊那郡阿智村)で実施されました。この見学会は交流企画委員会、先進コーティングアライアンス(以下ADCAL)の合同企画で37名の参加者がありました。
KOA様の会社案内と、今回見学させて頂く“厚膜チップ抵抗器”の生産工程の説明を頂いた後、施設見学をさせて頂き、最後にKOAのご担当者様と参加者全体で交流会を開催致しました。
1 KOA株式会社 七久里の杜工場
KOA様は長野県上伊那郡に本社を置く抵抗器を中心に扱っている電子部品メーカーで、抵抗器の他にサーミスタやインダクタ、ヒューズ、バリスタ、回路基板(LTCC)を商品化されております。特に抵抗器の分野において世界1位の売上を有し、国内でも1位のシェアを持たれておられます。今回見学させて頂いた“七久里の杜工場”は隣接する“匠の里工場“とあわせて、”厚膜チップ抵抗器の主力製造拠点であり、海外の生産拠点もコントロールされているとのことでした。
2 会社概要紹介と“厚膜チップ抵抗器”の工程説明
KOA様は1940年設立で、連結で売上550億円、人員4000名程度。抵抗関連で売上の88%を占めている。販売先は国内が33%、米国16%、アジア38%、欧州13%と世界に満遍なく販売しており、また用途は自動車向けが40%を占めている。生産は中国、台湾、香港、タイ、マレーシア、シンガポールに工場があるとのことでした。
工程は、分割用の溝入れがしてあるアルミナ基板(購入品)に、表裏面の電極材と抵抗材をスクリーン印刷後焼成、ガラスコート印刷と焼成、抵抗体のレーザートリミング、保護コーティングと乾燥、表示印刷と乾燥、短冊切断、スパッタ(表裏面の電極接続)、個片にブレーク、めっき(バレル)、全数検査で構成されている。工程では、変動する受注に対応するために、多能工化を進めてきた。また単納期対応、品質レベル向上など客先対応を改善してきており、20年前から自動車分野に参入できたとのこと。今後の課題としては、自動化を進め更に省人化、生産性向上を進めていくとのことでした。
3 施設見学
工場は周囲の環境に配慮し、敷地内にビオトープが配置され、飛来する蝶の種類の観察などが行われていました。工場内はクリーンルームで温度・湿度が管理されている。投入する基板は、各種サイズがあり、小型サイズの製品では一枚当たり数千個を超える取り数になる。見学者からは、各工程で数多くの質問がでており、その一つ一つに丁寧に回答頂きました。
4 交流会
KOAのご担当者様と参加者全体で、KOA様の食堂兼研修施設“ハルニレの宿”をお借りして1時間半の交流会を開催しました。工場紹介や施設見学で感じたこと疑問に思ったことなどについての議論や、参加者同士の情報交換など、有意義な時間となりました。
お借りした同施設は古民家の廃材を活用して、宿場町をイメージして作られており、“七久里の杜工場”が、七久里の地に溶け込んでモノづくりに挑戦しますとの思いで命名されたことを象徴しているような施設でした。また創業者が伊那谷の地を、農業を続けながら工場で安定した現金収入がえられ、家族が一緒に暮らせる豊かな地にしたいとの思いで、この地に工場を作られてとの思いが、今受け継がれていると感じました。
最後になりますが、当初予定よりも見学希望者が増加したにも関わらず気持ちよく受け入れて頂き、当日も丁寧な対応を頂いたKOAの皆様、今回の見学先を提案頂いたADCALの土屋副会長、見学会にご参加頂いた皆様のご協力に心より感謝いたします。