新年あけましておめでとうございます。
昨年は、2020年より続く新型コロナウイルスの感染拡大が第5波まで続き、11月に入り漸く沈静化したのもつかの間、新規変異株の一つ、オミクロン株が見つかり、1年を通して新型コロナウイルスに翻弄された年でした。そのような状況ではありましたが、延期を余儀なくされた東京オリンピック・パラリンピックも開催され、夏以降は、5Gをはじめとする通信関連、自動車関連の需要の回復により経済も上向きに転じてきております。
本年は、半導体の調達問題など未だ予断を許しませんが、環境問題をはじめとする社会課題の解決に取り組み、明るい未来を実現する第一歩となる1年にしていきたいと願う次第です。
日本のファインセラミックス産業は、産業動向調査委員会(委員長:東工大・篠崎教授)が通算39年にわたり実施しております「ファインセラミックス産業動向調査」によると、グローバル市場における総生産額は、2020年3.1兆円と報告されています。3年連続で3兆円を上回り、グローバル市場の中でも約40%のシェアを占め、成長が続いております。しかし、近年は、新興国などによる積極的な研究開発の推進や、価格競争の激化などにより、日本のセラミックス産業も愁眉を開いている場合ではないと考えております。今後も、既存市場をはじめ、環境・エネルギーの新規市場の拡大、金属・プラスチックからの代替市場の拡大等、更に強みを活かし、積極果敢に取り組むことで、人類社会の進歩発展に貢献していきたいと思います。
また、政府からの提言を踏まえ、昨年、マテリアル戦略有識者会議にて「マテリアル革新力強化戦略」が策定されました。科学基本計画も第6期が閣議決定され、マテリアルが重要分野に組み入れられております。日本のセラミックス産業を更に強いものとするための、統一的プロセスシミュレーション技術の必要性についても認識され、同技術の研究開発について議論されています。
さらに、2022年度予算概算要求にて、科学技術関連に4兆4,704億円、全体で8%増の概算要求がなされ、第6期科学技術・イノベーション基本計画で数値目標とされている5年間で30兆円の実現に向けた動きが始まっています。本年は、NEDOマテリアル革新技術先導研究プログラム「ファインセラミックスのプロセスインフォマティクス基盤構築」に続く国家プロジェクトの開始が計画されています。新型コロナウイルスの完全終息には、今少し時間を要すると考えますが、多くの工夫、努力によりウィズコロナ下での経済活動正常化に向けた取り組みが進むと考えています。
この様に、盛況な半導体市場に加えて、今後さらに広がる5Gや、Beyond5Gなどの次世代通信市場、環境課題を解決する水素も含めた環境エネルギー技術、モビリティー関連技術、人生100年時代の高齢化社会におけるQOLを高める技術など、ファインセラミックス産業に対する期待は非常に大きいと考えています。
そのような中、JFCAは、常にグローバル市場の観点から、ファインセラミックス産業の振興と拡大を図るべく、①国際ルールをリードする、②市場をリードする、③材料をリードするという3本の矢をもって活動し、①国内外の情報提供の場、②セミナーや研究会を通じた学びの場、③会員相互が繋がる場という3つの場を提供しております。昨年は、新型コロナウイルスの影響により、総会をはじめすべての取り組みがWeb会議を活用し実施されましたが、概ね成功裏に終えられたと考えております。JFCA主催のセミナーでは毎回100名近くの参加者を数え、また、海外講師を迎えてのCMCセミナーも活発な質疑応答など、非常に盛況でした。このような取り組みを通じて、少しでも会員企業の皆様に貢献できていれば幸いです。昨年Web会議でのセミナー開催の有効性が確認できましたので、今後はリアルとWeb会議を併用するハイブリッド型の各種セミナーをはじめ、総会や見学会など、会員間の交流の場づくりも検討していきたいと考えています。
さらに、昨年のトピックスの一つとして、1年半にわたりRoadmap2050編纂委員会(委員長:東工大・鶴見教授)にて取り組んできたRoadmap2050の策定が完了し、5年ぶりに改訂、発表されました。本Roadmapは自動車、医療、エネルギーなど9分野の市場、製品、セラミックスの技術動向について、専門家へのヒアリングも含め、調査分析をまとめたものとなります。発表と同時に日米欧で本Roadmapについてアンケート調査を実施したところ、その有用性が高く評価され、JFCAのみならず、日本のセラミックス産業の力をアピールできたと考えております。
国際標準化では、国際ルールをリードする活動として、2021年10月にTC206(ファインセラミックス)Web総会、12月にTC150(外科用インプラント)Web総会が活発に行われました。JFCA(日本)が国際幹事国を務めるTC206総会では、2022年ブラッセル総会に続いて、2023年は京都でのTC206総会の開催が採択されました。
また、創立35周年の節目として、ファインセラミックス産業の更なる発展を目的として、協会活動を象徴するロゴマークを会員企業様より募集し、新ロゴマークが決定いたしました。本年は、この新ロゴマークのもと、心新たに、幅広い活動を積極的に推進していきたいと考えます。
昨年は、数々の制約のある中、皆さまのご協力により、ニューノーマルを見据えた協会活動を進めることができました。この場をお借りしまして御礼申し上げます。新型コロナウイルスによる社会の急速な変化は継続しております。個人の価値観や働き方も多様化し、新たな価値が求められるとともに、環境課題の解決は避けては通れなくなっております。カーボンニュートラルの実現に大きく貢献でき、これからの時代と社会に役立つファインセラミックス産業を目指し、会員会社の皆さまとともに、経済産業省をはじめとする関係省庁・団体のご指導を得て、微力ではございますが最大の努力をしてまいる所存です。本年も、会員会社の皆様方からの一層のご支援を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。